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虫歯になりやすい人は歯周病になりにくい?

2024年12月20日

こんにちは。歯科医師の堀井です。

今回は虫歯と歯周病の病因論についてのお話になります。

病因論とは、なぜその病気が起こるのかの原因やメカニズムを究明する学問です。

皆さん虫歯の治療をして治ったと言われても、またすぐに虫歯になってしまった経験や

ぜんぜん歯科医院に通ってないのに虫歯で困ってないと聞いたこともあると思います。

またほとんど自覚症状がないのに歯周病と言われたことがある方も多いと思います。

う蝕(虫歯)も歯周病も感染症ですが、お口の中に棲み着いた常在菌による感染症なので、

病原菌に感染したからといってすぐに発症するものではありません。

また常在菌を完全に取り除くことはできないので、歯を守るためにはう蝕や歯周病の原因の菌を上手にコントロールしていく必要があります。

私たちのほとんどは歯周病原性細菌を持っていますが必ずしも歯周病を発症するわけではありません。

いままでの病因論の進化により、歯周病の治療の目的は、「細菌を 0 にする」というわけではないと分かってきました。

抗菌薬で常在菌を完全に除菌することはできないし、常在菌を無くそうとしてはいけません。

では虫歯は削って詰めたら治るのでしょうか?

それは思い違いです。

2000年にFDI(国際歯科連盟)から「削れば削るほど歯の寿命は短くなる」と発表されました。

虫歯と歯周病の病因はバイオフィルム(プラーク)です。口腔からバイオフィルムをなくすことはできません。

そして、虫歯と歯周病の原因菌は常在菌です。常在菌を追い出すことはできません。

そのため虫歯と歯周病が完治することはありません。

虫歯と歯周病の原因となるプラーク、バイオフィルムは歯茎の縁より上と下で縁上バイオフィルム(プラーク)と

縁下バイオフィルム(プラーク)の二つに分けられます。

このふたつのバイオフィルムの中には全く異なる細菌たちが棲んでいます。

縁上バイオフィルムにはう蝕原因菌、縁下バイオフィルムには歯周病原因菌がいます。

歯肉縁上にはミュータンス連鎖球菌などの好気性菌がいて発酵性糖質(ショ糖、ブドウ糖、果糖、調理デンプンなど)を代謝し、酸を産生します。バイオフィルムのpHは弱酸性です。

歯肉縁下には嫌気性菌彼がいます。歯周組織由来のタンパク質を主食とし、歯周ポケット内のpHは7.5〜9.0でアルカリ性となります。

縁上バイオフィルムの細菌は、う蝕は起こすが歯周炎は起こしません(歯肉炎は起こす)。

縁下バイオフィルムの細菌は、酸を産生しないのでう蝕は起こしません。

酸素と酸性を好む縁上細菌は、歯肉縁下(酸素が乏しくアルカリ性)に侵入しないし、縁下細菌も縁上には移行しません。

なのでう蝕と歯周炎は、別のところに住む菌が原因で起こります。

う蝕は縁上の酸産生菌が発酵性糖質を代謝して酸を作り、歯を溶かす方向にお口の中のバランスが傾いて起こります。

なのでう蝕の治療は歯を溶かす原因菌を減らして、歯に悪い食生活を改善することが必要です。

歯周炎は歯茎の中の歯周病原菌が原因で進行します。

歯茎に炎症が起きると内側からからの出血により、歯周病菌にとって必須栄養素である鉄分とタンパク質が供給され、

バイオフィルムの病原性が大幅に高まります。

進行を抑えるためには、細菌に供給される栄養を絶つことが重要です。

ブラッシング指導などの歯周基本治療により歯周ポケット内の細菌量が減少すれば、ポケット内の潰瘍面が修復し出血が止まります。

これにより、バイオフィルムの病原性は大幅に低下し歯周炎は改善します。

以上のように虫歯と歯周病は別の病因なので、患者さんの年齢とお口の中の状態に応じて、オーダメイドでう蝕、歯周病それぞれのリスクを判定することが歯を守る上で大事になります。

 

出典 No.232 2019年3月13日発行

予防歯科で防ぎ守る! ‐ポスト平成の歯科医療‐

https://www.dental-plaza.com/academic/dmr/no232/#content05

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