歯茎の下に潜む隠れた敵!「縁下歯石」があなたの歯を蝕む前に知っておくべきこと
2025年06月20日
こんにちは!歯科医師の水野です。
「歯石」という言葉は聞いたことがある方も多いと思いますが、「縁下歯石(えんかしせき)」となると、あまり聞き慣れないかもしれませんね。歯茎の健康に深く関わるこの縁下歯石について、分かりやすく解説していきます。
歯石と縁下歯石、どう違うの?
まず、歯石とは、歯磨きで取り切れなかった食べカスや細菌の塊(プラーク)が唾液のミネラルと結びついて石のように硬くなったものです。歯の表面についている白い、または黄色っぽい塊を見たことがある方もいるでしょう。これは「縁上歯石(えんじょうしせき)」といって、歯茎より上に見えている歯石です。歯磨きや歯間ブラシ、デンタルフロスなどで比較的取り除きやすい歯石です。
一方、今回お話しする縁下歯石は、歯茎の奥深く、歯と歯茎の境目にある「歯周ポケット」の中に隠れるようにしてできる歯石です。縁上歯石と違い、歯茎に覆われているため、自分では見ることができませんし、歯ブラシで取り除くことも非常に難しいのが特徴です。
縁下歯石はなぜ厄介なの?
縁下歯石が厄介なのは、その性質にあります。
・色と硬さ: 縁下歯石は、血液成分を取り込むため、黒褐色をしていることが多いです。また、縁上歯石よりも硬く、歯にしっかりとこびりついています。
・歯周病を悪化させる温床: 縁下歯石の表面はザラザラしていて、細菌が繁殖しやすい構造をしています。この細菌が歯周病の原因となり、歯茎の炎症(歯肉炎)をさらに悪化させたり、歯を支える骨(歯槽骨)を溶かしたりする「歯周炎」へと進行させてしまうのです。歯周病が進行すると、歯茎が腫れて出血しやすくなったり、口臭がきつくなったり、最終的には歯がグラグラになって抜け落ちてしまうこともあります。
どうやってできるの?
縁下歯石ができる主な原因は、歯周ポケットの存在です。歯周病が進行すると、歯と歯茎の間に隙間ができ、この隙間が深くなることで歯周ポケットが形成されます。このポケットの中にプラークが溜まり、やがて縁下歯石へと変化していくのです。歯周病は自覚症状がないまま進行することが多いため、気づかないうちに縁下歯石が溜まっていることも珍しくありません。
縁下歯石は自分で取れない!
前述の通り、縁下歯石は歯茎の奥に隠れているため、ご自身で歯ブラシなどで取り除くことは不可能です。無理に取ろうとすると、歯茎を傷つけたり、炎症を悪化させたりする危険性があります。
どうすればいいの?
縁下歯石を取り除くには、歯科医院での専門的な治療が必要不可欠です。
歯科医院では、専用の器具を使って歯周ポケットの奥深くにある縁下歯石を丁寧に取り除いていきます。これを「スケーリング」と呼びます。場合によっては、歯の根の表面を滑らかにする「ルートプレーニング」という処置も行い、細菌が付着しにくい環境を整えます。
これらの処置は、歯周病の進行度合いによって複数回に分けて行われることもあります。治療後は、ご自宅での毎日の丁寧な歯磨きと、定期的な歯科医院でのメインテナンスが非常に重要です。
まとめ
縁下歯石は、歯周病を悪化させる大きな要因となります。自分では見えず、取り除くこともできないため、定期的に歯科医院を受診し、プロによるクリーニングを受けることが歯と歯茎の健康を守る上で非常に大切です。
「最近、歯茎から血が出るな…」「口臭が気になるな…」と感じたら、それは縁下歯石や歯周病のサインかもしれません。手遅れになる前に、ぜひ一度歯科医院で診てもらいましょう! 早期発見・早期治療が、大切な歯を守る第一歩です。